鈴木雅明

今週金曜&土曜香港フィルを指揮する鈴木雅明さんに今日インタビューさせてもらいました。

鈴木さんというと何と言っても”バッハ”という印象ですが、今回の香港フィルでの共演では全くバッハの作品を取り入れていないのはどうしてでしょうか?
-大きな編成のオーケストラにはバッハの作品の演奏が不向きである事、またそもそもバッハが作曲した頃のオーケストラは現在のオーケストラとは全く異なっていることから、バッハの作品を取り上げませんでした。逆に大きな編成のオーケストラでしか表現できない作品もあるので、今回はハイドンやモーツアルト、メンデルスゾーンの作品を選びました。BCJ以外の楽団との演奏の際にバッハの作品を取り上げて欲しい、とよく依頼を受けますが、基本的にはバッハ以外の作品を取り上げていることとしています。ところで来年4月にボストン交響楽団と共演するのですが、オーケストラの大変強い要望もあったため、ヨハネ受難曲を指揮します。

香港フィルとの共演となったきっかけは?
-私のロンドンのエージェントから香港フィルとの共演のオファーがありました。以前はどうか分からないが、最近素晴らしい演奏を香港フィルが行っていること、またメンバーの出身国が実に多彩である、とエージェントから聞いたため、香港フィルに大変関心を持ち、今回の共演となりました。なお今回の演奏会にあたっては、香港フィルにお願いをしてゲストコンサートマスターとして寺神戸亮さんを呼んでいただきました。

香港フィルの印象はいかがでしょうか?
-まだ一日しかリハーサルをしていませんが、管楽器がとりわけ優秀ですね。香港フィルの音楽監督のエド・デ・ワールトが管楽器(オーボエ)出身であることから、管楽器にはとりわけオーケストラに対してより注意を払っているような印象があります。

鈴木さんと香港との関係は?
-実はプライベートを含め、今回はじめて香港を訪問しました。中国にも行ったことがありません。香港からは数年前からBCJへ招待を受けていたのですが、スケジュールの都合がつかないため、BCJも今まで香港で演奏会を行ったことがありませんでした。

鈴木さんにとってバッハという存在はどういったものでしょうか?また今回はバッハ以外の作品を演奏されますが、他の作曲家の作品を演奏する際に、バッハとの関連付けなどを意識されることはありますでしょうか?
-バッハとの出会いはずいぶん小さな頃からありましたが、その当時は現在のように多くのバッハの作品を自分が演奏するとは思っていませんでした。若い頃はむしろ1960年代にショルティとウィーン・フィルの来日公演のブルックナーの交響曲第7番、そして1970年のバーンスタインとニューヨークフィルとの来日公演のマーラー交響曲第9番を聞いて大変感銘を受けた、という印象があります。その後カール・リヒターによるバッハの演奏を聞いてからバッハに大きな関心を抱きました。そしてバッハのカンタータ全曲録音をすることになって以来、バッハとは切っても切れない関係になりました。バッハ以外の作品、例えばモンテヴェルディやシュッツ、モーツァルトやハイドンなどを演奏する際に、特別バッハの作品を意識したり、関連付けることはありませんが、バッハ以外の作品を演奏した後、再びバッハの作品を取り上げると、バッハの素晴らしさにいつも強く実感しますね。

今年の秋、東京シティフィルとマーラーの交響曲第1番を演奏すると聞き、大変驚きました。
-以前からマーラーの作品を取り上げてみたいと思っていたのですが、東京シティフィルとの共演が決まり、その際にこのオケの音楽監督の飯守泰次郎さんに「好きな曲を振ってもいいですか?」に訊ねたところ「どんな曲を指揮されても結構です」と快諾されたので、マーラーを取り上げることとしました。実はマーラーの作品を指揮したことは一度もないため、今からとても楽しみにしています。

hiro
クラオタ歴30数年。 香港在住。 クラシック音楽や映画などについて、日本語紙に時々寄稿しています。