ワーグナーとナチスとユダヤ人

イスラエルのオーケストラがワーグナーの聖地ともいわれるバイロイトでワーグナーの作品を初めて演奏した、という歴史的な録音(2011年7月26日)。

コンサートはまずイスラエルの国歌”Hatikva”から始まり、マーラーのリュッケルト(一部)、メンデルスゾーンのSym.4などと全てユダヤ系の作品が演奏されます。リストの”夕べの鐘、守護天使への祈り”(管弦楽版)に続く。そしていよいよ今もイスラエルで演奏することは殆んどタブーとされているワーグナーの作品・・・。

この演奏会はワーグナーのひ孫カタリーナ・ワーグナーが”ワーグナーとユダヤ人のかけ橋に”と協力し、バイロイトで公演が実現したのですが、イスラエル国内ではホロコーストを生き延びた人たちから怒りの声が上がり、また与党議員からは楽団への予算支出差し止め要求も出たそうです。なお楽員がドイツに行くことについて楽団員の自由意思に任された結果、36人中35人が参加。しかし彼らは自国でのリハーサルはせず、ドイツ国内でのリハのみで公演に臨んだとか。実は楽団員の多くは家族や親族がホロコーストを経験した犠牲者。このオーケストラの音楽監督で今回指揮をしたロベルト・パーテルノストロ自身の母親もホロコーストの生き残り、親戚などをふくむパーテルノストロ一族の80%がホロコーストによって亡くなったそうです。

バイエルン放送がこの演奏会の模様を報じた動画(ドイツ語)はこちら。
“Israel Chamber Orchestra in Bayreuth 2011”

hiro
クラオタ歴30数年。 香港在住。 クラシック音楽や映画などについて、日本語紙に時々寄稿しています。