NHK交響楽団第1835回 定期公演 Aプログラム

NHK交響楽団第1835回 定期公演 Aプログラム
武満 徹/波の盆(1983╱1996)
モーツァルト/2台のピアノのための協奏曲 変ホ長調 K.365
エルガー/変奏曲「謎」作品36
指揮:尾高忠明
ピアノ:チック・コリア
ピアノ:小曽根 真
2016年5月15日
3:00pm
NHKホール

29年ぶりのNHKホールでNHK交響楽団を聴きました。知っている人は知っているでしょうが、ぼくは昔からN響嫌いですが、完璧ノックアウトされるほど素晴らしい演奏でしたわ。
一曲目の武満徹の『波の盆』でまず涙。この曲は1983年に日テレで放映されたテレビドラマの主題曲なのですが、なんとも心優しい曲。初めて聴いた作品ですが、こんなやわらかな曲を武満さんは創っていたのかと思いました。

二曲目はモーツァルトの『2台のピアノ協奏曲』。ピアノを弾いたのはあのチック・コリアと小曽根真さん。舞台にあがったチック・コリア、最初に何をしたと思います?自分のiPhoneで拍手で迎えた観客をぱちぱち写真撮影。もうやんやの喝采。1楽章のカデンツアは小曽根さんと完璧ジャズセッション。まぁこんなに自由奔放で楽しいカデンツア聴いた事ありませんでしたわ。調べてみたら、事前にN響のサイトにこんな注意書き(?)も。
“※今回のモーツァルト《2台のピアノのための協奏曲》の演奏では、モーツァルト作品における即興の精神、ソリスト自身の音楽的背景、そして協奏曲での元来の伝統を踏まえ、第1楽章と第3楽章のカデンツァでソリストによる即興演奏を行います。この即興は、チック・コリアによって作曲された短いモティーフに基づくものです。”

日頃N響を聴いている観衆だから当然本来はご法度と分かっているはずなのに、1楽章を演奏し終わると、もーたまらずみんな拍手拍手。そりゃ拍手しちゃいますよ!2-3楽章もそこかしこにjazzyな演奏満載、スイングスイング~♪演奏を終わると、チック・コリアはまたまたiPhoneを取り出して、観客をぱちぱち撮影。楽員をぱちぱち撮影、そして小曽根さんと一緒に自撮り。もぉー終演後の盛り上がり方は半端じゃなかったです。そしてアンコールがこれまた凄い。完全にチック・コリアと小曽根さんのセッション。観客に手拍子をするようチック・コリアが促し、ノリノリ観客はしゃんしゃん手拍子。もうIt’s A Chick Corea World!!!
3曲目のエルガーの『エニグマ』。こんな心に染み入るエニグマを聴いたのは恐らく初めてかも。とりわけ”ニムロッド”には泣かされましたわ。”ニムロッド”は香港が中国に返還される前々日に香港で””ラストナイト・オブ・プロムス”のスタイルの演奏会があったのですが、その時に”ニムロッド”の演奏と共に香港のイギリス植民地時代の歴史を映像で流されたのです。中国返還から20年、こんなはずじゃなかった香港の今の状況に置かれている現状を考えると本当に複雑。植民地という帝国主義の歴史の残土は払拭すべきかもしれないけど、はたしてどうなんだろうか?中国返還は一体香港にとって良かったのかどうか?と思いました。香港フィルは7/1と7/2のシーズン・フィナーレ・コンサートでアシュケナージがエルガーの交響曲第1番を演奏します。ちょっと前にはウォルトンの『ベルシャザールの饗宴』が共演されました。これからこんなコテコテのイギリス音楽がこれからも香港で聴けるのだろうか?小説や絵画と違い、音楽はある意味抽象的に様々な事柄を伝えるけど、何かを感じる人、気が付く人にはもっと強烈に心に伝わるので、全体主義的政府や国家は脅威に感じ、演奏を禁止したりする。スターリン時代の強烈な音楽の締め付けを思い起こしてしまうのはぼくだけだろうか?んな事を色々感じたり考えたコンサートでした。
終演後楽屋口で尾高さんと小曽根さんとおしゃべり。あいにくチック・コリアさんは先に帰っちゃんで、小曽根さんに”チック・コリアさんがいらしたら、’thank you your Amadeus Mozarzzy’って言いたかったんですよ~”って小曽根さんに言ったら、大爆笑!そして昨日のアンコールとは違うのですか?って訊いたら、”昨日とは違う曲ですよ。今日のアンコール曲は弾いたことがないんだけど、何を弾こうかってチップ・コリアに訊いたら、’ぼくの演奏を聴いて弾いてくれたらいい’って言われたんですよ”って。そんな感じで弾けちゃう小曽根さんもスゴイわ。そして尾高さん、”覚えていらっしゃいますか?”って訊いたら、”あれ?いつ香港から来たの?”って。すんごいよねー、もう10数年前に尾高さんが香港フィルを指揮(恐らく尾高さんは日本人で最も長年&多く香港フィルを客演指揮された方です)された際にインタビューした以来なのに。指揮者の記憶力は半端じゃないわ。今の香港フィルの事とか色々話をしましたわ。
ぼくがNHKホールで1987年に聴いた一連のベルティーニさんとN響の共演(ヴェルディのレクイエム/マーラーSym.3/ダフニスとクロエとペトルーシュカ)とは全く違っていましたね、今のNHK交響楽団。他の日本のオケと同じように色彩を乏しさは相変わらずだけど、楽員が相当世代交代してるせいか、だいぶいい感じでしたわ。数年前に定年退職された2ndヴァイオリンの根津さんとN響香港公演(デュトワ指揮)以来に久々再会(定年後も元楽員がステージに立つのはN響だけなんですかね?)。根津さんとは時々メールでやりとりしていますが、直接お目にかかるのはN響香港公演の際にインターコンチで根津さんと一杯飲んで以来です。NHKホール、音響工事したんですか?尾高さんの音の作り方がよかったのか、Dチケットで3階のL5-9ですが、とても自然に聴けました。
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指揮者・尾高忠明が、エルガー《謎》ほかプログラムへの思いを語ります。(N響 動画)

hiro
クラオタ歴30数年。 香港在住。 クラシック音楽や映画などについて、日本語紙に時々寄稿しています。